海水で体のミネラルバランスを取り戻す、フランス発タラソテラピーの魅力とは
~日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS倶楽部代表理事、ジュアンド ヤスコ氏 インタビュー~
「人生100年時代」といわれる現代、ウェルビーイングは、私たちの社会にとって大きな課題となっています。いかに病気を予防して健康を維持するか。いかにストレスを減らして満たされた気持ちで暮らすか。旅先の選択にもウェルビーイングを重視する消費者が増えています。
「水による健康法」の長い伝統を持つフランスには、ウェルネスツーリズムの主要な目的地であるタラソテラピーや温泉スパなどの施設が豊富にあり、さまざまな種類の質の高いサービスを受けられます。
フランス大使館で長年日仏交流に携わったあと、フランスの温泉やタラソテラピーと、奥深い日本の温泉文化の交流に”ウェルビーイング“な可能性を感じて「日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS倶楽部」を設立されたジュアンド・ヤスコ氏に、フランスのタラソテラピーについてお話をお聞きしました。
●目次
●「タラソテラピー」とは
-「タラソテラピー」について、教えていただけますか。
日本では海洋療法と訳されますが、海水や海洋性気候、海藻、海泥などを健康資源と捉え、さまざまなトリートメントとして組み合わせておこなう副作用のない「自然療法」のことです。
「海水はすべての人の悪を洗い流す」
古代ギリシャの詩人エウリピデス(紀元前480-406 頃)はこんな言葉を残しています。2千年以上も前から、海水にはある種の治癒力があると考えられていたということです。
タラソテラピーの語源はギリシャ語で、タラサが海、テラピーが治療。19世紀にフランス人医師ボナルディエールが、この二つの言葉を合わせて作った造語です。
-どうして海水にはそんな力があるのでしょうか。
すべての生物は海からやってきたと言われますが、地球の6-7割は海、不思議なことに人間の体内水分量も6-7割で地球とほぼ同じです。20世紀はじめに、海水に含まれるミネラルの組成と人間の血漿の組成がほぼ同じであることが科学的に実証されました。
このことから、海水や海辺の環境は人体のミネラルバランスを整えるサポートをすると考えられています。
-タラソテラピーはもともと健康保険が適用される医療だったのですか。
はい。フランスのタラソテラピーはかつては温泉療法と同じカテゴリーにあり、健康保険が適用されていました。温泉療法は今も条件を満たせば健康保険の適用対象ですが、日本と同じ少子高齢化による財政的な問題もあり、タラソテラピーの健康保険適用は1998年に廃止となってしまいました。
タラソテラピーはその後、厳しいフランスの消費者のニーズを探り、応えながら、人気の高いウェルネスツーリズムの拠点へと成長しています。
-「タラソテラピー」では、具体的には海水をどのように使うのでしょうか。
海水を体温に近い33-36℃に温めると、海水のミネラル成分が体内に吸収されやすくなります。タラソテラピーでは、この温めた海水を利用して、いろいろな施術を行います。
ジェットバスやアフュージョンといってベッドに寝ている上からザーッと温めた海水が全身に滴り落ちてくる施術、立ったままで受ける、水圧の高い海水のシャワーで足裏や手のひら、首など全身を流していく施術などがあります。海藻や海泥をパック剤としても使用します。これらの施術を目的別にそれぞれ12-20分前後ずつ組み合わせて行います。
ただ温めていればいい訳ではなく、長年の経験の積み重ねによるきめ細かなテクニックが求められます。アロマや地元の塩をベースとしたスクラブや五感に働きかける光の演出などもあり、フランスのタラソテラピーでは、長年蓄積されたノウハウを実感できます。
塩分を含む海水を温めたプールでは、水の浮力や抵抗も淡水より大きく、33-36℃程度の体温に近い温度に温められた海水プールは「不感温度」で、浮き棒でただぷかぷか浮いてみたり、思いっきりストレッチしながら歩いたり、圧中(ジェット)でマッサージ効果を楽しむこともできます。
●「タラソテラピー」の効果
-「タラソテラピー」が体にもたらす効果はなんでしょう。
当協会の顧問で、フランスタラソテラピー組合会長であり、タラソテラピーセンター「コテ・タラソ(Coté Thalasso)」のオーナーであるDr.ペレーズ・シスカールによると、まず基本は「体内のミネラルバランスを整える助けをする」ことです。フランスでタラソテラピーセンターの医師やスタッフに効能を尋ねると、「特に微量元素を補給して体内のミネラルバランスを整えるサポートをする」と口をそろえ、共通した認識を持っています。
体内のミネラルバランスが崩れると、体調を崩し、さらに放置すると病気にも繋がりかねません。タラソテラピーでは、体内では生成できない「ミネラル」、特に「微量元素」を皮膚や呼吸から取り込むと考えられています。また、“海の恵み”がもたらす心地よい刺激は、心にも体にも深い安らぎを与えてくれます。
●フランス式、「タラソテラピー」体験
-フランスの施設で受けられるタラソテラピーには、どんなコースがあるのでしょうか。
最近はストレス社会を反映してか、「バーン・アウト」「ウェルネス」「リフレッシュ」「快眠」「ダイエット」などのコースがどのセンターでも多くみられます。「足のむくみを解消する血行促進」コース、「男性向け」コースや「ママン&べべ」コース、癌の治療後のケアなどQOLを重視したケアなどもあり、もともと医療行為であった名残が垣間見られます。
私たち日本人にとって楽しい発見も多いですよ!フランスのウェルネスの場では「Japon」に出会うことが多いです。例えば「禅コース」。もちろん、座禅を組む訳ではありません(笑)。日本の禅は精神性を高めるイメージがあり、穏やかでくつろいだ環境のなかで、心も体もリラックスできますよ、というコースです。
私自身の体験でいうと、7日間の禁煙サポートコースを受けて本当に禁煙できてしまったのには本人が一番驚きました。海水と禁煙の関係を解明するのは非常に難しいのですが、現実的に効果があったことは確かで、それが一番大事だと思っています(個体差がありますので一概に効果があるとは言えませんが)。
●フランスで「タラソテラピー」を受けてみたいという方に、アドバイスがあれば教えてください。
タラソテラピーのトリートメントは単品でも受けられますが、「どのトリートメントがいいか分からないから一番安いものを選んだら、機械的なベッドだけでがっかりした」などの声も聞かれます。
私が代表を務めるSPALOHAS倶楽部は、長年フランスで体験取材を続けるなかで、質の高いタラソテラピーを提供して日本にも関心のあるセンターと提携を結ぶことができました。行かれる際はご相談いただければ、ご希望に沿ったタラソテラピーを提案させていただけると思います。
提携しているセンターは観光地としても非常に人気の高い地域にあります。
例えば、大西洋岸ブルターニュ地方のテルム・マラン・ド・サン・マロは、パリからTGVで約2時間14分。世界遺産モンサンミッシェルまでは約55Kmでバスも出ています。フランス人がこよなく愛するサン・マロは、かつての海賊の町で古い城塞があり、城塞のなかには美味しいクレープ屋さんやカフェ、レストラン、可愛い小物屋さんが並んでいておすすめです。
南仏のコテ・タラソ・バニュルス・シュル・メールはピレネー山脈最東端の地中海沿い、スペインとの国境に近く、自然保護区が多い美しい町です。独特のカタルーニャ文化に触れながら、豊かな土壌がもたらすテロワール、ワインやオリーブオイル、ハチミツ等も存分にご堪能いただけます!観光地へ足を延ばすにも絶好の立地にあり、近隣ではデュフィ、マチス、ピカソなども滞在した小さな港町コリウールや、同じオキシタニーニー地方の黒いマリア像で有名な世界遺産ロカマドール、スペイン側ではダリの故郷フィゲラスがあります。ガウディの世界が広がるバルセロナにも2時間程で行けるので、日帰り観光が可能です。
また、当法人は南仏のモンペリエ市にある非常に評判の高い語学学校とも提携しています。「タラソテラピーを体験するだけでなくフランス語もブラッシュアップしたい!」という方には、コテ・タラソのタラソテラピー語学学校のセットでのご予約も可能です。
2023年はラグビー世界大会、2024年はパリ五輪と、これから世界的なイベントも盛りだくさんのフランス。この機会に、新しいフランスの「体験型ウェルネス旅行」として、本格的なタラソテラピーを体験されてはいかがでしょうか。
※本ページに掲載の画像・テキストの転載・無断使用は固くお断りいたします。
■今回お話をうかがった方
一般社団法人日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS俱楽部 代表理事
ジュアンド ヤスコ氏
在日フランス大使館経済部(当時)で市場調査を行い、温泉や海が「超少子高齢化時代」に有益と知り2005年に独立。
フランス最大の湯治場Dax市長はじめ取材を続け、日本で初めて「フランスの温泉療法と健康保険」を紹介。フランスの温泉イノベーションと日本の温泉文化交流による相互補完を目的に、日仏の医師・専門家・施設等と提携して啓蒙や体験サポートを行っている。
大分県豊後高田市ビーチ事業で、ヘルスツーリズムの核を総監修し、フランスのノウハウを日本型に変換。本事業で市が2021年度国土交通省「地域づくり表彰審査会特別賞」と内閣府(恋人の聖地)「地域活性化大賞観光庁長官賞」を受賞した。
主な活動:
ビアリッツ「海と健康」シンポジウムで日本のタラソテラピー、温泉文化等紹介(2013)
フランス最大の温泉療法施設組合CNEThより「フランス温泉療法名誉賞」(2014)
「世界温泉サミット~医療・健康・美容分科会」(2018)、「ヴィシー・ジャポン~日仏温泉円卓会議」(2021)パネリスト他多数。
日本温泉地域学会会員。
おおいた温泉情報交換会委員(大分県受嘱)。
一般社団法人 日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会 SPALOHAS倶楽部
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