【イタリア・ヴェネト州特集】ヴェネツィアを基点に訪れるウェルネスの楽園
~共和国の栄華の名残から、千年の歴史を持つ温泉まで~

一度は行ってみたい観光地アンケートを取ると、毎回上位に名を連ねるヴェネツィア。ロマンチックな運河と魅惑的な雰囲気を持つこの町は、多くの旅行者にとって憧れの地です。

しかし、ヴェネツィアの美しさはヴェネト州という魅力に溢れたモザイク画の中の一枚のタイルに過ぎないことは、まだ日本ではあまり知られていません。

イタリア北東部に位置するヴェネト州は、水面輝くラグーン(干潟)から緑豊かな丘陵地帯まで変化に富んだ自然に恵まれ、訪れる旅人にバラエティー豊かな体験を与えてくれます。

美しい自然の中でのエクスカーション、芸術都市や古代都市の散策、地域の歴史と文化を反映した食とワイン。そして、様々な体験を満喫した後に堪能したいのは、千年の伝統を持つイタリア式テルメ。

さぁ、ヴェネト州の知られざる一面を発見する旅にあなたをお連れしましょう。

ヴェネト州の魔法:水と空に囲まれたモザイクの風景画

世界有数の観光地・ヴェネツィアを州都に持つヴェネト州は、オーストリア国境に接する雄大な山岳地帯ドロミーティの峰々から、穏やかなアドリア海に面するヴェネツィアン・ラグーンや砂浜まで広がっています。扇のように北部から徐々に開いていく土地は、水辺と陸地が微妙なバランスで融合した独特の生態系を持ち、刻々と変化するモザイク画のような風景を見せてくれます。

壮大な景色に包まれながらハイキング、トレッキング、アウトドア・アクティビティを楽しめるドロミーティ渓谷。

見渡す限りブドウ畑が広がり、イタリアで愛されているスパークリングワイン・プロセッコの産地である丘陵地帯。

ヴェネツィア、ムラーノ島、ブラーノ島、トルチェッロ島......、ヴァポレット(水上バス)に乗って穏やかな潮風に吹かれながら流れに身をゆだねるラグーン。

息をのむような風景と、そこに広がる平和で穏やかな雰囲気、夢のようなパノラマに包まれながら忘れがたい思い出を刻むことができるのがヴェネト州です。

ヴェネト州にはヴェネツィア・マルコポーロ国際空港とトレヴィーゾ・カノーヴァ空港があり、日本からのアクセスも便利です。また、ヴェネト州の主要都市とローマ、ミラノをはじめとするイタリアの大都市は、効率的な高速鉄道で結ばれています。

ラ・セレニッシマの秘宝

初めてヴェネト州を訪れる人は、壮麗なヴェネツィアに加え、この地方に非常に豊かな芸術的・文化的遺産があることに驚かされるでしょう。

アドリア海の女王と呼ばれたヴェネツィア共和国「ラ・セレニッシマ」。その魅力はヴェネツィア中心部の運河や宮殿にとどまらず、ヴェネト州の広範囲にわたって歴史、芸術、文化に富んだ場所が散りばめられ、世界中の観光客を惹きつけてやみません。

個性と魅力を持つユニークな芸術都市をいくつかご案内しましょう:

  • パドヴァ:
    ヴェネツィアから電車でわずか約30分のパドヴァは、聖と俗が融合した魅力を持つ街です。ジョットの有名なフレスコ画で飾られたスクロヴェーニ礼拝堂は、西洋美術の傑作とされ、細部に至るまで神聖な物語を伝えています。1222年に設立されたパドヴァ大学には世界初の解剖学教室があり、近くの聖アントニオ聖堂には世界中から巡礼者が集まります。何世紀もの間、学者や芸術家たちが集った歴史あるカフェ、カッフェ・ペドロッキ(Caffè Pedrocchi)周辺は毎朝活気に満ちています。

  • ヴィチェンツァ:
    パドヴァから電車で15分ほど西に進んだところにあるヴィチェンツァは、世界中の建築様式に影響を与えた天才建築家パッラーディオの建築の宝庫です。大聖堂やテアトロ・オリンピコ(世界最古の屋根付き劇場)など、彼の作品はユネスコの世界遺産に登録されています。歴史地区を散策していると、ルネッサンス時代にタイムスリップしたような雰囲気が味わえます。

  • ヴェローナ:
    ロミオとジュリエットの物語で有名な愛の街・ヴェローナは、ローマ時代と中世、ルネッサンスが出会う野外博物館です。今でもオペラが上演されるローマ闘技場(アレーナ)は、ローマのコロッセオに匹敵する美しさです。エルベ広場やシニョーリ広場といった中世の広場には歴史の名残と活気が溢れ、貴族の館の中庭にはフレスコ画や秘密の庭園が隠されています。

しかし、ヴェネト州の真に隠れた宝石は、歴史に流されず独自性を保ってきた村々とヴェネツィア風別荘です。

「百の地平線の街」というニックネームを持つアゾロは、時が止まったかのような丘の上に佇む中世の村です。石畳の道、古代の宮殿、渓谷を見下ろす城塞など、まるで絵画のような景色が広がります。

人間チェスで有名なマロスティカには中世の城壁と城がそのまま残されており、イタリアの偉大な詩人ペトラルカが晩年を過ごしたアルクワ・ペトラルカは、ヴェネト州南部のエウガネイ丘陵になだらかに横たわっています。

ヴェネト州内には4,000軒以上の歴史的な邸宅、ヴェネツィア風別荘が点在しています。なかでも「ヴェネト州のヴェルサイユ」と呼ばれるストラにあるヴィッラ・ピザーニは、114の部屋と複雑な緑の迷宮で訪問者を驚かせます。マゼールにあるヴィラ・バルバロは、ヴェロネーゼのフレスコ画で装飾されたパッラーディオの傑作のひとつであり、建築的なエレガンスと、今も現役の農地としての機能性を兼ね備えています。これらの歴史的な邸宅では、地域の文化や歴史に浸ることができます。

ヴェネト州の街、村、別荘はそれぞれ異なるストーリーを持っていますが、それらはすべて、何世紀にもわたって領土の隅々に美と繁栄を生み出した「ラ・セレニッシマ(ヴェネツィア共和国)」の赤い糸で結ばれています。この秘宝たちは、知られざる美しさに興味を持つ人々に発見されるのを待っているのです。

食卓で楽しむ、ヴェネト州のウェルビーイング

ヴェネト州のウェルビーイングのコンセプトは食卓から始まります。ヴェネト州の食事は、食材の選択から料理の取り分け方まで、あらゆる要素が調和と健康を生み出すようにデザインされています。

伝統料理と社交性が一体となっているこの土地の食卓に迫ってみましょう。


・エウガネイ丘陵で作り出される甘露

パドヴァのすぐ近くにある緑豊かなオアシス、エウガネイ丘陵は、ミネラルを豊富に含んだ火山性土壌を持ち、独自のテロワールを表現する上質なワインが作り出されます。DOC(原産地統制呼称)認定を受けたワインのグラスを口に含めば、その味わいに魅了されることでしょう:

  • セルプリノ:プロセッコの地元版。フレッシュで繊細な泡が特徴で、食前酒に最適。
  • フィオル・ダランチョ:辛口、スパークリング、パッシートタイプがあり、オレンジの花の特徴的なアロマを持つ。デザートやスイーツに最適。
  • カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨン:火山地帯の力強さが現れた、フルボディで骨格のしっかりした赤ワイン。

何世紀にもわたるワイン造りの伝統の結晶であるこれらのボトルは、単なる飲み物ではなく、郷土料理の味を引き立てるパートナーです。この地域にある多くのワインセラーではガイド付きのテイスティングが楽しめ、ワイン造りの技術やこの土地での伝統的なワイン造りの歴史を知ることができます。


・ヴェネト州の伝統を味わう

ヴェネト州は豊かな美食の伝統で知られ、IGP(地理的表示保護)マークの付いた、土地に根差した食品が数多くあります。質の高い地元の食材を旬の時期に伝統のレシピで味わう、シンプルでありながら豊かな風味を持つ料理の数々は、この土地の物語をお皿を通して語りかけてくれます。

ヴェネト州で味わえる伝統的な料理をいくつかご紹介します:

  • バッカラ・アッラ・ヴィチェンティーナ:干しタラ、イワシの塩漬け、オリーブオイル、牛乳をベースにしたヴィチェンツァの伝統料理。
  • サルデ・イン・サオール:魚、玉ねぎ、干しブドウ、松の実を組み合わせたヴェネツィア料理。
  • ビーゴリ・コン・アナトラ:新鮮でざらざらとした多孔質のパスタに、濃厚な鴨のラグーを和えたもの。
  • ポレンタ:トウモロコシ粉を用いた保存食。様々な調理法に対応する万能食品。
  • ティラミス:ヴェネト州を象徴するデザートで、コーヒー、マスカルポーネ、柔らかいフィンガービスケットで作られる。

郷土料理のレシピには様々な解釈があり、地元の人に尋ねようものなら、何時間でも話は続くでしょう。郷土料理を食べることは、世代から世代へと受け継がれてきたヴェネト洲の食の伝統を発見することに繋がっています。


・最高の隠し味はともに味わう家族・友人

ヴェネト州の食卓での幸せの秘訣は、和気あいあいとした雰囲気にあります。日本の居酒屋が社交の場であるように、ヴェネト州のオステリア(ヴェネツィアならバカロ)は、気の合う仲間たちが一緒にいる空間です。「チケッティ」と呼ばれる、スペインのタパスを彷彿とさせるサイズと種類の小皿料理を分けあえば、たちまち場は和み、居心地の良いひとときが楽しめるでしょう。

美味しい料理と美味しいワインを媒介に一緒に過ごす時間を喜ぶ、これらがヴェネト式ウェルビーイングの隠し味です。

千年の歴史を持つ癒しの水:テルメ・エウガネイ

ヴェネト州の美や食を堪能した後は、丘陵地帯に佇む緑に囲まれたウェルネス・オアシスに足を運んでみてはいかがでしょうか。

ヴェネツィアからわずか電車で45分、パドヴァの南西に位置するエウガネイ丘陵の東に広がっているテルメ・エウガネイは、130以上の施設と約220の温泉プール、13,000床以上の宿泊施設を擁する、ヨーロッパでもっとも有名で人気のある温泉観光地のひとつです。

テルメ・エウガネイとは総面積は約23km2の地域全域を指し、主な温泉地には北部のアーバノ・テルメモンテグロット・テルメガルツィニャーノ・テルメと、南部のバッターリャ・テルメがあります。

暖かくミネラル豊かな温泉水が湧き出ており、泥風呂から温泉水まで、心と体をリフレッシュするために理想的なトリートメントが幅広く用意されています。


・千年の歴史をもつ温泉

テルメ・エウガネイの歴史は数千年前に遡ります。ローマ時代、温泉水はすでにその治療効果で知られ、利用されていました。多くのローマ貴族や皇帝がリラクゼーションと健康管理のために温泉を訪れたことが記録に残っています。

その後も詩人ペトラルカや、イタリア統一の立役者ガリバルディなどの著名人が、湯治場の名声に惹かれて滞在しました。一般庶民も浴場を利用し、太古から受け継がれてきた所作や習慣といったテルメ文化が現代に受け継がれています。

ウェルネスとリラクゼーションを求める人々に愛され、何世紀にもわたり、世界中から観光客が訪れているテルメ・エウガネイ。皇帝や著名人を迎えた湯に浸かり、千年の伝統に想いを馳せてみてください。

何世紀にもわたるワイン造りの伝統の結晶であるこれらのボトルは、単なる飲み物ではなく、郷土料理の味を引き立てるパートナーです。この地域にある多くのワインセラーではガイド付きのテイスティングが楽しめ、ワイン造りの技術やこの土地での伝統的なワイン造りの歴史を知ることができます。


・テルメ・エウガネイの特徴

テルメ・エウガネイはなぜ古今東西愛されてきたのでしょうか。その秘密は、効能豊かなミネラル塩と微量元素を含んだ温泉水にあります。

テルメ・エウガネイの水源は丘陵の約70km北北西に位置する小ドロミーティと呼ばれる山岳地帯、レッシーニ山脈です。雨水は浸透性の石灰岩の割れ目を通って約3,000メートル深さまで染み込み、そこからゆっくり25年以上かけて、地下を旅してエウガネイ丘陵にたどり着きます。

地表に戻った水の平均温度75℃、長旅で成分が凝縮された水には、若干の放射能と、岩石が溶けた際にできた多数の鉱物塩(塩素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、硫黄、臭素、ヨウ素、ケイ素)が含まれています。

この「奇跡の水」は、特に皮膚病やリウマチ、呼吸器系の疾患に効果があるとされ、この土地が長い間愛されてきた秘密なのです。


・息をのむような景色と近代的なスパ施設の融合

エウガネイ丘陵にあるホテルやスパ施設は、伝統と現代的な快適さが見事に融合しています。この地域は自然保護区に指定されており、豊かな生態系と多様な植物が見られます。訪れる人々は、自然の中でリラックスしながら、ウェルネス体験を楽しむことができるのです。

テルメ・エウガネイのなかで最も施設が充実しているのは、アーバノ・テルメとモンテグロット・テルメです。温泉療法だけでなく、リハビリテーションや美容トリートメントにも特化した施設もあり、個別のニーズに応じた多様なプログラムを提供しています。特に、温泉水を使用した吸入療法や、皮膚疾患に対する泥を用いた治療が行われており、これらの効果は医療的にも認められています。

イタリアの温泉施設は日本の温泉とは異なり水着着用。多くの施設では、スパトリートメントと健康的なヴェネト料理、エウガネイ丘陵の自然遊歩道での運動を組み合わせた、特別なフィットネスプログラムを提供しています。

ヴェネツィアやヴェネト州の観光を満喫した後は、自然、歴史、ウェルビーイングが調和したテルメ・エウガネイで唯一無二のリフレッシュタイムをご体験ください。

ヴェネツィア発・おすすめの2泊3日ウェルネスプラン

この記事でご紹介したヴェネト州の魅力を体験したい皆さまに向けて、ヴェネト州の文化や美食と温泉ウェルネスを組み合わせた3日間の旅程をご紹介します。
このプログラムは、ヴェネツィアを起点に鉄道と路線バスを利用したものです。

1日目:ヴェネツィアからテルメ・エウガネイへ

午前:ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅からパドヴァ駅までローカル列車で約25分。スクロヴェーニ礼拝堂をガイド付きで見学(要予約)、有名なカフェ・ペドロッキ(Caffè Pedrocchi)でコーヒーを楽しみながら歴史地区を散策。

午後:定期路線バスでアーバノ・テルメへ移動(20分)。(多くのホテルがパドヴァ発着のシャトルサービスを提供しています。ホテル予約時にご確認ください)。スパホテルにチェックイン。

  • 簡単な問診
  • 温泉入浴でリラックス
  • 泥フェイシャルトリートメント

夕方:ホテルにて、ヴェネト州の代表的な料理とエウガネイ丘陵のワインをお楽しみください。

2日目:ウェルネス三昧

午前中

  • 泥セラピー(体全部)
  • 地元産のエッセンシャルオイルを使ったリラクゼーションマッサージ
  • ハイドロマッサージ付き温泉入浴

午後:エウガネイ丘陵への小旅行と地元ワイナリーでのワインテイスティング(多くのホテルが送迎付きのガイドツアーを企画しています)。

夜:地域にある昔ながらのレストランで、ヴェネト州伝統料理の美食体験(ホテルレセプションで相談・予約が可能です)。

3日目:リラクゼーションと地域文化体験

午前中

  • お好みのスパトリートメント
  • エウガネイ丘陵の景色を眺めながら、屋外温泉プールでリラックス

午後:ヴァルサンツィビオのヴィラ・バルバリゴ(Villa Barbarigo)を訪れ、壮大なイタリア式庭園をお楽しみください(多くのホテルがシャトルサービスを提供しています)。

夕方:夕食またはフライトに間に合うようにヴェネツィアに戻ります。

一人当たりの予算(目安)

  • 4つ星スパホテル(2食付):1泊150~200ユーロ
  • 基本的なスパトリートメントパッケージ:200~300ユーロ/泊
  • 現地での交通費とアクティビティ: 100~150ユーロ

温泉でのリラクゼーションや郷土料理の美食体験を組み合わせて、ヴェネト州の新たな一面を発見してみましょう!

ヴェネツィアを飛び出して、ヴェネト州の魅力を探す旅に出よう!

これまで紹介してきたように、ヴェネツィアを含めたヴェネト州には、温泉と美食の楽園が広がっています。

日本の温泉文化に通じる要素を持つテルメ・エウガネイは、何世紀にもわたって人々の心と体を癒してきました。パドヴァ、ヴィチェンツァ、ヴェローナといった芸術都市では、世界遺産級の建築や芸術作品が訪れる人々を魅了し続けています。そして、なだらかな丘陵地帯では、最高級のワインと伝統的な料理が、訪れる人々の味覚を満足させてくれます。
ヴェネツィアを訪れようと思ったら、ぜひ、ヴェネト州の他の地域にも足を延ばしてみてください。ヴェネト州ならではのくつろぎや芸術、美食が、きっとあなたの旅を更に豊かなものにしてくれるはずです。

さあ、ヴェネツィアのその先へ。新たな発見の旅に出かけてみましょう。

【Youtubeでも動画公開中】
Ville Venete - Too Good To Miss

Esplora la montagna veneta

Too Good To Miss - Estate in Veneto

協力:ENIT S.P.A.

参考サイト:ヴェネト州観光局

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