自然・地域・人との”つながり”をつくる旅が、豊かで輝く人生へと繋がる
~ 荒川教授インタビュー ~
Withコロナ・Afterコロナで生活様式が変わった今、健康に対するコンテンツが注目を集めるようになりました。「健康」が意識されるようになったことで、旅・観光の目的も変わりつつあります。徐々に広まりはじめた「ウェルネスツーリズム」とは何なのでしょうか。ウェルネスツーリズム研究の第一人者である荒川教授にお話を伺いました。
●「ウェルネスツーリズム」について、教えてください。
ウェルネスツーリズムとは、「心と体の健康に気づく旅」「自身のライフスタイルへ活かせる新しい発見や見直し、自己開発ができる旅」「原点回帰し、リフレッシュしながら明日への活力を得る旅」のことを言います。
現在、世界中で行われているウェルネスツーリズムのほぼ半分は、スパや温泉を目的とした旅行であると言われています。しかし、スパ以外にもヨガ、フィットネスといったアクティビティ、ヘルシー食、美容、健康増進・治療を目的としたメニューまで多岐にわたります。人によって旅の目的は様々ですが、そのような体験を通して、心身を癒しリフレッシュする。自身のライフスタイルを見直し、原点回帰してみる。旅先でその地域の生活文化に触れることで、新しい視点を見つける。そういった体験が、豊かな人生へと繋がっていきます。
具体的には、リフレッシュ効果を得られるとともに、自然・人・地域との“つながり”をつくる旅であると言えます。旅先で新たな“つながり”を得るのは、健康長寿の秘訣として注目されています。
●「ウェルネスツーリズム」がもたらす効果とは 何でしょうか。
旅先での自然体験・食・地域の人との交流によりストレスが減少する事で、心身ともにリフレッシュできます。すなわち、旅をすることで元気がもらえます。現代人は慌ただしいライフスタイルのあまり、心身の不調をきたしやすくなっています。日常から離れるだけで心理的にもプラスの効果が働きやすくなるため、ストレス軽減・睡眠の質が向上する効果があると、多くの研究で明らかになっています。
健康は一過性で手に入るものではありません。自然体験をすることがゴールではありません。できるだけゆったりと過ごし、自然やその地域特有のものに触れ、五感を総動員して感じること。そうする事で、本来備わっていた免疫力・生命力を取り戻すきっかけとなり、本来の自分に”還る”。つまり、原点回帰をする事ができるのです。
●日本は温泉をはじめ、世界有数のウェルネス資源を持っている国です。 海外からはどのような点で注目されているのでしょうか。
近年、”長寿大国”である日本のライフスタイルに世界中が関心を寄せています。それは何故かというと、日本はほぼ20年連続で世界一なんですよ。真似をしたくても世界一の長寿国にはなかなかなれません。まちがいなく、日本ブランドの最大の価値になり得ます。長寿の秘訣は、食を中心にその地域での文化や生活スタイルにあるのではないか。そういったところから興味を持たれています。
●これからプラン立てして旅・観光をしてみたいという方に、選び方のポイントや探し方のコツがあれば 教えてください
皆さんの中には「これはウェルネスツーリズム?ウェルネス体験なのか?」と考える人もいると思いますが、深く考えることはありません。すべてがテーマなのです。日本は豊富なウェルネス資源で溢れています。豊かな自然、温泉、海、食と和の伝統文化、アート、ファッションなど、地域によって様々です。旅先での体験・サービス・モノを通して自身の人生に彩りを与えるとか、何か新しいリセットの起点になる等、そういった観点で選んでもらえればと。達人トラベラーにもなってくると、旅先での生活文化を知り自身のライフスタイルに取り入れるだけでなく、その土地の行事や祭りに参加したいという考えを持った方が多くいます。
また、旅行日数や場所についてですが、旅をするなら長期間休みを取り、遠出したほうが良いのでは?と思う方もいるかもしれません。1泊でも日帰りでも近場であっても、心と体のバランス調整が図れるウェルネス要素があれば良いのです。ポイントは“3つのR”。心身ともに癒される「Relax(リラックス)」、ライフスタイルを見なおす「Reset(リセット)」、自然・人・地域とのつながりを創造する「Relation(リレーション)」です。これらを意識すれば、れっきとしたウェルネス旅となります。
ゆったりと脱力でき、癒される場所でありながら、程よい刺激があり、自己開発のできる場所を。
自身のライフスタイルに寄り添う体験ができ、豊かで輝く人生につながる場所を見つけてもらえればと思います。
■お話伺った方
国立大学法人琉球大学
国際地域創造学部/大学院観光科学研究科 ウェルネス研究分野 教授 医学博士
荒川 雅志 氏
■プロフィール
1972年福島県生まれ。ウェルネス研究、ウェルネスツーリズム研究の第一人者で医学博士。
日本の大学で初の「ヘルスツーリズム論」「ウェルネスツーリズム論」専門科目を開講。
世界5大長寿地域“ブルーゾーン”の研究をはじめ、長寿者のライフスタイル研究、地域資源を
活かしたウェルネスツーリズムのモデル開発、新しいウェルネスの定義、ウェルビーイングを
達成するウェルネスSDGs研究開発などを行っている。研究論文、著書、メディア寄稿など多数。
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●編集後記
荒川教授にお話を伺うため、編集部2名で琉球大学に行きました。教授がいらっしゃるゼミ室に入った瞬間、窓から一面に広がる海と空の美しさに 思わず感嘆の声が出てしまいました。今回は仕事で沖縄に行きましたが、日々の慌ただしさを一瞬で忘れさせてくれる風景を目の前に、何だか心が軽くなった気がします。ちなみに取材中、コーヒーを頂いたのですが、沖縄産コーヒーは「知る人ぞ知る」ブランドだそう。豊かな風味としっかりとした酸味が特徴で、苦みと甘みのバランスがとれた美味しさがあります。見かけた際は、ぜひ飲んでみてはいかがでしょうか。
最後になりましたが、この場を借りて取材に協力してくださった荒川教授に御礼を申し上げます。
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