秋のイタリアは収穫祭(SAGRA)に行こう! 青空の下でワインを楽しむブドウ祭り

「今年もSAGRAで青空ワインする?」

まだ夏休みの余韻が残る9月下旬、アウトドア仲間に誘われてSAGRAに行ってきました。

SAGRA(サグラ)とはイタリア語で収穫祭のこと。主に秋にイタリア各地で祝われる伝統行事で、栗、クルミ、キノコ、リンゴ、ワインなど、その土地の農作物の収穫を祝うお祭りです。

その土地ならではの料理を味わったり、伝統音楽やフォークロアのショーを鑑賞したり、ゲームやコンペティションに参加したりして楽しむ場でもあるSAGRAは、どこも地元住民や観光客で大賑わい。行きたいSAGRAを楽しむには週末が足りない!なんて嘆くイタリア人もいるくらいです。

今回は秋のイタリアから、今の季節の風物詩、SAGRAの様子をお伝えします。

 

#サン・コロンバーロ・アル・ランブロ村のブドウ祭り

今回私が友人に誘われて向かったのは、ミラノから南東約50kmにあるサン・コロンバーロ・アル・ランブロ。イタリアの母なる川・ポー渓谷の真ん中にある孤立したサン・コロンバーノの丘と、ポー川に注ぐランブロ川に挟まれた小さな村です。

この村で毎年9月最後の週末に開催されるのが、今回私たちが向かったブドウ祭り。今年は65回目を迎えるイベントは、1957年から続いています。

土曜日の夜のコンサートで幕を開け、日曜日はメイン会場でのワインの試飲・購入ができるほか、青空市場や美術展、寓話をモチーフにした山車による賑やかなパレードや花火など、催し物が満載。小さな村の大きなイベントです。

ミラノからの高速道路を降りると、車窓には田園風景が広がります。サン・コロンバーロ・アル・ランブロ村に続く緩やかな丘陵地帯にはブドウ畑があちらこちらにあり、「どんな美味しいワインが待っているかな」と期待がどんどん高まります。

駐車場に車を停めて村の中心部を目指して歩くと、目に入るのはレンガ造りの建物。これは中世の教会でしょうか。レンガが剥がれ、ツタの絡まる壁に歴史を感じ、とっても遠足気分。

入場料の4ユーロを払って村の中心部に入ると、目抜き通りは青空市場のテントで埋め尽くされていました。

Raspadüra(ラスパデューラ)と呼ばれるパルミジャーノ・レッジャーノを刃物で鰹節のように薄く削ったチーズ、大きさも形も色も様々で片っ端から味見したくなるサラミや、地元の伝統菓子らしき大粒のサクランボが入ったタルト。

一軒一軒出店を眺めるだけでもテンションがあがりますが、収穫祭ということで、生産品の製造工程や調理法などを詳しく説明してくれたり、試食させてくれたりするお店が多いのも嬉しいポイント。なかなか前に進めない~。目的地のワイン試飲場に着く頃には、お腹はほどほどに、両手は買い物袋でいっぱいに埋まっていました😆

#お城の中庭でビックリするものを発見

出店通りを抜けて人波の動く方向に進んでいくと、ものものしい要塞のような塔が現れました。テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」に出てきそうな風貌の城壁は、村のシンボル、ベルジョイオーゾ城への入り口です。THE中世!いまにも鎧を着た兵隊が出てきそう!

城壁をくぐり抜けて中に入ると、広々とした中庭に出ました。ここは農民や職人の村「リチェット」と呼ばれ、サン・コロンバーノDOCワイン協同組合のワインショップもあります。

また、城壁や門を破るための打撃棒が再現された練兵場もありました。説明書きによると、この打撃棒はイタリア語で「羊」と呼ばれ、紀元前200年頃に北アフリカのカルタゴで使われて始めたとのこと。こんな歴史トリビアも、遠足の楽しみの一つですよね。レプリカに装飾として羊の頭が付けられているのは、レプリカ職人のダジャレなのでしょうか。

「実際の戦いでこんな装飾があったらきっと邪魔だろうなぁ」そんなことを思いながら羊の隣にあるレプリカの目の前に移動すると······説明書きは無くても、用途は一目瞭然の装置が出現。

これは、断頭台、ですよねぇ。ほんわか行楽気分が、一瞬凍りつきました。

マリー・アントワネットの処刑手段として有名なギロチン台が発明されたのは、意外にも最近の18世紀のこと。それまでは、刑の執行は首切り役人による手動·····断頭台の横の斧が生々しい😱

#いよいよ本題、青空の下のワイン試飲会

出店に、お城に、とぶらり寄り道をしてしまいましたが、いよいよ今日の目的であるワイン試飲会場に到着しました。

会場の入り口にあるテントでサン・コロンバーノDOCワイン協同組合のロゴ入りのワインホルダーとプラスチックのグラス、試飲チケットを購入したらお楽しみのスタートです。

試飲チケットは5回分で15ユーロ、10回分で25ユーロ、良心的な値段ですよね。

なだらかな斜面を持つ丘全体がブドウ畑で覆われているサン・コロンバーノ地域のワインは、DOC(管理原産地呼称)という、イタリアのワインにおける上から二番目の格付けを受けています。

地域にあるワイナリーがそれぞれ持ち寄った自慢のワインは、太陽の光の下でとろりと輝く赤ワイン・白ワイン・ロゼワインもあれば、シュワシュワとグラスの底から湧きたつ泡に夏の名残を感じるスパークリングワインもあり、どれを試飲するか選ぶのが大変。

こういう場では、プロにお任せするのが一番。

ワイナリーのスタッフにこだわりの一本を出してもらったり、好みを伝えておススメの一本を選んでもらったり。一期一会ならぬ一期一杯で、見知らぬ味との出会いを楽しみました(気に入ったワインは購入も可能です)。

お城の裏にある広々とした芝地の試飲エリアは、ぐるりと外周をワイナリーや食べ物の出店が取り囲み、中央には買ったものをその場で味わえるようにイスとテーブルが設置されています。

1年目の去年は、この試飲エリアでパニーノを購入しましたが、2年目の今年は、包丁とまな板とバゲットを持参。村の目抜き通りの出店で買ったチーズやサラミをその場でパニーノにしてピクニック気分で味わいました。

流通が発達して、地方の珍しいものも比較的簡単にスーパーや通販で買えるようになりましたが、地産地消、その土地で作られたものを、その土地の空気を感じながら、青空の下で楽しめるSABRAはやはり別格!

知らない土地の風景に出会い、街を歩いて歴史や文化を知り、地元の人たちと触れ合う。心も胃袋も豊かな幸せに満たされた週末でした。

― 今回行った場所 ―

サン・コロンバーノ・アル・ランブロ村 (SAN COLOMBARO AL LAMBRO) https://www.turismosancolombano.it/

鉄道駅がないサン・コロンバーノ・アル・ランブロ村。公共機関でのアクセスはバス利用になります。

ミラノからだと地下鉄3番線(M3)のサン・ドナート・ミラネーゼ駅からバスE61番に乗車。サン・コロンバーノ・アル・ランブロ村の中心地、Steffenini通りまで約1時間です。

レンタカーを借りれば、バイオリンで有名なクレモナや、中世の文化が街のあちこちに残るパビアにも足を延ばせますよ。